作曲家、水野修孝の作曲の基盤が「平和への希求」であったことを改めて思い出させてくれた演奏でした。
日本作曲家協議会主催、「日本の作曲家2007」と題された演奏会が2月15、16両日、サントリーホール・小ホールで行われました。様々な作曲家のいわゆる室内楽に分類できる作品をあつめての演奏会。その最後の日の最後に演奏されたのが水野作品、弦楽四重奏曲「夜の歌」でした。
演奏が終わって、すぐに拍手などできない、一種荘厳ともいえる空気がそこにはありました。最終楽章、中間部が壮大なフーガで、そのままクライマックスを迎え、終結するかと思わせますが、そのあとに静かな祈りの音楽が始まります。もちろん全体で10数分の作品ですから時間的には短いのですが、それだけに凝縮された作曲者の思いが伝わる、まさに感動の時でした。
1992年、千葉県幕張メッセで行われた「交響的変容」全部の上演に行かれたかたも多いかと思います。筆者もその一人です。長い年月を費やしての作品、各部分が完成した時にそれぞれ初演され、のちに再演されています。
第1部から第3部、それぞれ作曲技法を駆使し、深く広い音楽の世界を繰り広げてくれました。その後書き上げた長大な第4部を含む、全体を通して演奏をこの四重奏を聞きつつ思い出しておりました。「交響的変容全4部」、特に第4部から発せられたことを端的に言うなら、「反核」、そして「世界平和」でした。
作曲者自ら筆をとったあの独唱と合唱部分の歌詞。それが音楽とともに大きな力となって迫り、彼の作曲者としての理念の最たるものを明らかにしてくれました。今回の演奏時間が十数分の室内楽にも平和への思いは明確に込められており、非常に激しく聴き手に迫ります。
小林健次、平尾真伸(ヴァイオリン)、江戸純子(ヴィオラ)、安田謙一郎(チェロ)という名手たちによる演奏でした。作曲家の意思がこれだけはっきりと聴き手に伝わるということは、演奏家たちの音楽体験の深さと作品のもつ力のバランスによるのでしょうか。おのずと呼応しあうものがお互いの心のなかにあるゆえでしょう。
作品は1966年に第3楽章が単独の室内楽作品として生まれ、1997年暮にふたつの楽章が誕生。そこで全3楽章の弦楽四重奏曲となりました。1999年2月千葉県習志野文化ホールにて古典四重奏団により初演されています。
3月11日には新作の初演が行なわれるとのこと。「夜の歌」から10年、どのような作品が生まれるのでしょうか?
小林裕子
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