姫路城の天守閣を舞台としたオペラ「天守物語」が、関西二期会によって10月26日、関西初演された(尼崎アルカイックホール)。泉鏡花の原作を水野修孝が作曲した一幕の作品だが、当初はNHKテレビのために1977年に作曲され、2年後に舞台初演が行われた。水野の作風の転換をうながした作品で、古今東西の音楽を消化した多彩な様式とロマン的な心情の的確な表現が素晴らしい。 能・狂言からシュプレッヒゲザング(話すような歌)、日本の童謡からワーグナー風の重厚な管弦楽までを混然一体とした独自の芸術境をひらいており、その完成度は極めて高い。安直なご当地オペラとは全く次元の異なった秀作である。

物語は魔界と化した天守閣の第5層が舞台となる。魔界の主の富姫(斉藤言子)のところに、遠く猪苗代から亀姫(福永修子)が朱の盤坊(沢井宏仁)らの供を連れて訪問。富姫は姫路城主の白い鷹(たか)を奪って渡す。城主の厳命を受けて鷹を取り戻しに来た鷹匠の姫川図書之助(川下登)に、富姫が恋心を抱く。しかし城主の軍勢が彼を追って天守閣に乱入、二人は死を覚悟するが、最後に姫を守護する木像の獅子の目が製作者によって再生されることで助けられる。二つの異次元的な空間がもつれ合う論理性の乏しい幻想的な内容だが、封建体制への批判もあり、音楽が全体に強い説得力をもたらしている。演出(栗山昌良)はかなり具体的だが、ここでは現田茂夫指揮大阪センチュリー交響楽団の叙情と劇性が変転する演奏がみごと。歌い手も5人の侍女や合唱まで含めて、それぞれ水準が高く、その均質な美声の歌唱陣が、上演を成功させた。関西二期会の実力は、今やわが国でもトップレベルだろう。きわめて密度の高い舞台であった。